それにはあまり意味がない

自由に生きて、強く死ぬ。

現代メイドカフェ考

メイドカフェ分類

 「電車男」等のブームにより、「萌え」「アキバ系」「メイドカフェ」といった「オタク産業」は、現在隆盛の一途を辿っている。様々な形態で「オタク的」雰囲気を持った情報・商品が発信され、消費されている。その消費のされ方は様々で、多元化している。


 メイドカフェを例に取ると、「メイドの服装」をした女性達に「萌え」と言う感覚を抱き、消費している、いわば本来的意味である「一次的消費」。カフェで働いている女性達に「萌え」という感情を抱き、消費している「二次的消費」。他に「萌え」を感じる対象を持ち、メディアの定義する「萌え」「オタク的雰囲気」を、積極的・消極的に楽しむ消費。メディアの定義する「オタク的」雰囲気を楽しむ消費(観光的消費)。好意的・悪意的に「メイドカフェ」をネタとして捉える消費。このように消費の形態が、多元化・メタ化していると言える。

 

 ここで定義付けておきたいのは、「メイドの服装をした女性達が働く喫茶店」と「メイドカフェ」が、イコールでは無いという事だ。前者はあくまで「服装」「シチュエーション」に「萌え」を感じているのであり、この「メイド萌え」という感情は、喫茶店に通わずとも、前もって形成されている感情である。その「萌え」が具現化された対象として「メイドカフェ」を消費しているのではないだろうか。一方、後者の「メイドカフェ」における「萌え」という感情は、そこに働いている女性達を対象とした感情であり、究極的には「メイドである必要性」がない感情だと考える。生身の女性に対して、萌えという感情を持つという事は、「好意」「憧れ」「好き」「愛情」「性欲」等と表現を言い換えても差し支えないはずだ。ただ、「生身の女性」という表現には若干の語弊がある。「メイド萌え」を性質として持つ層も、当然、生身の女性に対して萌えているからだ。前者と後者の「萌え」を分類するために、ここでは女性達の「人格」と言う側面から考えてみる。


 「メイド萌え」という性質を持つ層が、なぜメイドカフェで働く女性達に「萌える」のか。それは、女性達が「メイド的性質」を持っている(演じている)からである。本来その女性が持っている、人格・性質ではなく、あくまで「メイド的性質」に萌えているだけなのである。そこにある萌えの構造とは、小説・アニメ・映画等で形成されていく萌えの構造と変わりが無い。もしも、3次元的なアニメーションキャラが接客する喫茶店が開発されたとすれば、変わらずに「萌え」られる人数は多いのではないか。

 

 しかし、もちろんそこまで人間は単純な動物ではない。「メイド萌え」を持つ人間も、他に多種多様な萌えを持っている。きっかけとして女性の「メイド的性質」に萌えた後に、その人が本来持っている様々な要素へと萌えが繋がり、その結果、その女性自身に萌えという感情を持つにいたるのではないか。


・「萌え」という言葉の定義


 上記のように見ていくと、「萌え」「好き」「恋」「性欲」等、様々な感情・本能がごちゃまぜになってしまっているし、また、正しく使い分ける事は困難だ。そもそも、人間の感情を一つの言葉で断定する事は難しく、同時に様々な感情を持つ事が出来る能力こそ、人間を人間たらしめるものであるとも考えられる。そこで、「萌え」をこういった言葉で仮定してみる事にする。


・(定義案・1)萌え = コミュニケーションを必要としない感情・人格を必要としない感情(ここの定義は常に見直しを)


・(定義案・2)萌え = 片想い的感情(自分の中に元々ある、人を好きになるポイント。) → (反対語として)両想い的感情:互いがコミュニケーション行為を通じて「萌え」を創造する(その人が元々持っていなかった、人を好きになるポイントを作り出す・気付かせるコミュニケーションが出来る関係性。もしくは、相手の幸せ、つまり萌えるポイントを把握し、互いに萌えを与え合う関係性)


・(定義案・3)萌え = 対象に「与えられる」感情。対象と共に作り出す、共有する感情ではない。


・現在のメイドカフェとは

 現在、巷に氾濫しているメイドカフェには、「メイド萌え」を持つ層を対象とした、本来的意味を持つカフェは少ない。前述したように、そこに存在するものがメイドでなくとも成り立つものが多数である。メディアで盛んに取り上げられている、いわばブームとして認知されているメイドカフェとは、本来的メイドカフェと似て非なるものであると言える。では、一体「メイドカフェ」とはどのような構造を持ち、何を魅力としてブームとなり得たのだろうか。ここで私は「コミュニケーション行為」を一つのキーワードとして、論じてみたい。


メイドカフェ = 従業員の女性を中心としたサロン・コミュニティ。特に、アニメーション・コスプレ・漫画的趣向を持つ女性が所属しているカフェは、サロン的傾向が強い。来客者との対話、来客者同士のネタとしての消費等、コミュニケーションをサービスの軸としている点が、他のカフェと比較して異なる点である。


来店者は「萌え」だけではなく(萌えを目的とせず)、コミュニケーション欲求の解消、それに伴う「癒し」の効果(ここが結構重要になるかも)、自己発露(アニメ等、一般的にオタクと言われるような、専門的知識を開放できる。コミュニケーションが取れる喜び。)を目的としている。


さらに従業員側にとっても、給与という一元的な報酬だけでなく、自己発露の効果が望めるし、実際にそれを目的として働く女性も多い。「win-win」の関係性の成立。

自己実現理論の話を組み込む。この理論で、萌えと性欲との話が語れるかもしれない。)


イベント化社会の観点ももちろん盛り込んで。何故、社会はイベント化されていくのか → コミュニケーションの欠如。多様化した価値観の中で、共通のイベントに参加する事でコミュニケーションを取るきっかけとしたいのでは。