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それにはあまり意味がない

明日の朝、目覚めるための夜の過ごし方。

ミイラ取りはミイラよりも醜い。

ナンシー関さんの名著の中に「信仰の現場」というものがあります。マニアや追っかけ、何かを盲目的に信じる人にはスキがある。そのスキを丹念に、でも遠巻きに眺めつつ現象を切り取っていくコラム集。何が素晴らしいのかと言えば、文章力、題材選択のセンスという基本的な才能に加えて、書き手の立ち位置というか、題材への距離感が極めて適切なのです。多少の悪意はあるんだけど、かといって馬鹿にしてるわけでもなく、それでいて、絶対に一定の距離感は保ち続けている。最初から研究対象を「笑いものにしてやろう」と決め付けているわけでなく、あくまで自分が実際に体験し、そこから読み取れる感情や垣間見える「何か」を正確に文章に書き起こしていく中で、「スキ」が露になっていく、という面白さがある訳です。


しかし、これはあくまでナンシーだからこそなせる業であり、僕らみたいな凡人がこれをやろうとしても、返って人間の醜さというものが露わになっていくだけだと思うのです。


メイド喫茶は欲望定点観測の場だと書きましたが、これは何も熱心なメイド喫茶好きな方達だけを観察しているわけでもないのです。例えば、基本的にメイド喫茶を馬鹿にしてる視点で「ちょっとメイドさん萌えなんだけどー」みたいな感じで騒ぐ二十代中盤の男女混合サラリーマン達。何を今更、という感じ。メイド喫茶ブーム、ひいてはアキバ系ブームももう下火の今、ですよ。自分達のアンテナの感度の低さは無視ですか。そうですか。


「雑誌に載ってるオシャレとされているもの」を着こなしている気になっているイマドキの男の子二人組(非オタク。これが一番多いパターン)。最初は客、メイド含めて馬鹿にした感じで話しているのだけれども、いざメイドさんがカワイイ子だと少しずつ態度が変わっていく。友達の手前、お互い馬鹿にしてると言う基本姿勢は崩せないものの、最終的には何だかんだでメルアドとか聞いちゃって、断られちゃって。んで、笑ってやんの。何だそれ。


その場でメルアド聞くパターンよりも、結局はまっちゃって、そのままお店に何度も足を運ぶパターンになってる事の方が多いみたい。一人で来て、その時は普通に女の子口説くパターンの人とか。こないだ笑ったのが、「もう遅いし、危ないから。送っていくよ。」見たいな感じで、メイドさんをお店の外で待ってた男の子(最初は友達連れで来て、はまっちゃったパターン)。お前が一番あぶねぇよ、みたいな。


そんな中、今日は地元のショッピングモールに「完全メイド宣言」という、メイド喫茶発のアイドルグループが来ました。地元に来た、と言う事と、観察しに行く、という事は同義な訳です。絶好のメイド日和という事で、ショッピングモールのイベントスペースは満杯。一目でわかるメイドのファン達と、それを「キモイ」だの言いながら取り巻く人達、そして普通の家族連れの買い物客。こんな三重構造をとりながら、メイド達のライブは始まりました。ライブが始まると、お決まりの掛け声をかけながらダンスに興じるファン達と、それを笑う取り巻き、唖然とする買い物客という雰囲気に。


正直、対象がメイドになっている点を除けば、ファンの行動はただのアイドルのライブと変わりません。奇抜な衣装を着てみるのも、いろんな奇声とも取れる掛け声をかけてみるのも、びっくりするくらい変なダンスを踊ってみるのも、基本的にはアイドルとのコミュニケーションなのです。ステージにいるアイドルに気付いてもらうために編み出された、アイドルファン達に脈々と続く伝統芸だと思っていただければわかりやすいかと思います。


事実、モーニング娘。だろうが、声優だろうが、今回のようにメイドのライブだろうが、ファン達の行動と言うのは意外とパターン化されています。そして、それを笑ったり、ネタにして楽しむ行為は、だいぶ前に過ぎ去った事のようにも思えます。


前述した「信仰の現場」は、十年以上前に出版された本なのですが、それにも「アイドルのライブ」は取り上げられていません。少なくとも、その頃には既に「今更アイドルファンを取り上げてもね」という認識があったんだと思います。その代わり、本では「矢沢栄吉ライブ」の模様が取り上げられており、これが「アイドルライブファン」を笑う行為への、いわばカウンターのように作用している様にも感じます。両方根っこは一緒じゃねぇか、見たいな。


メイドファンを笑う、ヤンキーの兄ちゃん姉ちゃん。あんたらのそのだぼだぼスウェットのセンスはアリなのか。そして真ん中だけ金髪のツンツン頭て。どこのananがオススメてんのよ。


男が後ろから抱きしめながらライブ観て笑ってるばかっぽぅ。お前らのその顔はアリなのか。


「オタクきもい」なんて言いながら、無印良品をぶらぶらする女子高生。nonnoをそのまま着てみました、みたいな服装で。じゃあたぶんお姉さんは「nonnoおたく」だよ。


人を見て笑うこと、馬鹿にすること、軽蔑すること。それは鏡を見る行為と等しい様な気がします。だから、風刺やブラックジョークが成立するんじゃないのかなと。絶対攻撃されないところから、人を見下して笑う行為。


ねぇ知ってる? 鏡だよ、それ。