それにはあまり意味がない

自由に生きて、強く死ぬ。

「リボンの騎士 ザ・ミュージカル」8/10・昼 安倍なつみ初回


今回フランツ王子はトリプルキャストになっていて、そのメンツも石川梨華安倍なつみ松浦亜弥という豪華メンバーを揃えてきたわけです。その三人とも、それぞれに違った性質の「強さ」を持った女性達なんだと思います。その強さこそが男役で輝く部分で。前回見た際には、石川さんのその負けん気の強さが印象に残りました。石川さんは根っこの部分がネガティブな故に、他の人に負けまいととにかく努力して頑張って、またその体育会気質も相まって、まさに「おっとこまえ」な雰囲気を醸し出していたと思うんです。「激情」というかね。ここまで男役がはまるとは思ってなかったので、予想外だったんですけれども。で、なっちはどうなのかと思いつつ見てみましたよ。


フォークジャンボリーの感想でも書きましたが、安倍さんにはやっぱり少年性があって、また顔立ちも童顔という事もあってそういう意味では三人の中では一番素直に男役がハマる人なのかなと。で、一番感じたのは、やっぱりなっちの優しさの部分。芝居のテーマの一つでもある「赦し」とか「受け入れる事」「愛する事」そういった「強さ」みたいなものが滲み出てきていた様に思います。ラストにサファイアが自ら剣に飛び込んでくるシーンでの、なっちの演技、いや演技というよりもその表情その佇まいその雰囲気はやっぱり心に響いてくるものがあって、うん、泣いちゃいましたけども。そこでサファイアを真に愛している事、サファイアを受け入れた事が表現できているからこそ、高橋さんの心が開放される演技とその対比であるヘケートの悲しみ、その存在自体の悲劇性がしっかり浮き出てきていたように感じました。このシーンの安倍さん、高橋さん、藤本さんはもっと賞賛されて良いのになと思っています。


全体的にも落ち着いた、凛々しいフランツ王子像が表現されていたように見えました。松浦さんはどんなフランツになるのか興味津々丸なんですけれども。んで、なっち出演回は石川さんが淑女とピエールに扮する事になるんですけど、こちらはすんなりと役に入り込んでいたように思います。淑女はまさに石川梨華だったし、ピエールの正義感というのは石川さんのそれに相通ずるものがあったんじゃないかなと。牢番が美勇伝になったのも好印象。あの三人で「仲間」というものを意識させる芝居をした方が二人verよりも良いんじゃないのかな。全員初日よりも歌も演技も安定していて、安心して見ていられましたよ。いよいよアイドルの枠を超えてきた感覚。僕らは事によるとすごい重要な局面に立ち合っているんじゃなかろうか。


でもって、終演後はなっちコールの大声援と、サプライズでみんなが「ハッピーバースデー」を合唱する中、泣きながらバースデーケーキのローソクを吹き消すなっちの姿がありました。うん、やっぱりこういう温かみのある雰囲気を作り出せるのが安倍なつみなんだと思うし、それを全て受け止める強さを持ってるのがなっちなんだよね。そういう雰囲気が昔のそれより自然に作れるようになってきたのが、きっとファンを含めて作り出してきた人間味なんだなと感じました。


安倍さんは天使なんだか人間なんだかわからないけれども、とりあえず。なっち、現人神。